近年では、暗号資産やWeb3が一般化し、ブロックチェーンを活用したサービスが金融や行政・DX・サプライチェーンなどさまざまな領域へ広がっています。

しかし、実際にどの企業がブロックチェーン技術を提供しているのか、具体的に理解している人は少ないでしょう。

ブロックチェーン技術は単なる暗号資産の基盤ではなく「改ざん耐性」や「透明性」「分散管理」などの特性から、社会インフラの高度化を支える重要な要素となりつつあります。また、大企業からスタートアップまで、国内外で数多くの企業が独自のプロダクトを展開し、実際に企業や自治体で導入が進んでいます。

この記事では、2025年時点で注目すべきブロックチェーン関連企業10社を厳選し、会社概要と提供サービスを紹介します。ブロックチェーン企業を探している方や導入を検討している担当者は参考にしてください。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは、取引データをまとめた「ブロック」を時系列に連結し、ネットワーク全体で管理する分散型台帳技術です。中央管理者を置かず、複数の参加者が同じデータを共有・検証するしくみで成り立っています。

この構造により、以下のような特徴が生まれます。

  • 改ざんが極めて困難
  • データの透明性が高い
  • システム障害に強い

ブロックチェーンは、暗号資産の基盤として知られています。しかし、近年では、金融や物流、ヘルスケア、行政、ポイント管理、認証など、金融以外の分野でも活用されるようになりました。

なお、企業によってアプローチも異なり、独自チェーンを提供する企業やブロックチェーンサービス(BaaS)を提供する企業やWeb3やトークンビジネスに特化した企業など、多くのプレイヤーが存在しています。

ブロックチェーン関連サービスを提供する企業8選

国内外の主要なブロックチェーン企業8社を紹介します。

  • Soramitsu(ソラミツ)
  • Datachain株式会社
  • Ginco株式会社
  • bitFlyerBlockchain株式会社
  • SBIホールディングス株式会社
  • 日立製作所
  • 富士通株式会社
  • IBM(InternationalBusinessMachinesCorporation)

ひとつずつ見ていきましょう。

Soramitsu(ソラミツ)

画像引用:https://soramitsu.co.jp/ja

Soramitsuは、日本発の先進的ブロックチェーン企業で、特に中央銀行デジタル通貨の分野で世界的な実績を持つ企業です。
同社はLinuxFoundationが主導するオープンソースプロジェクト「Hyperledger」の中核開発メンバーであり、HyperledgerIroha(イロハ)の主な開発企業として知られています。

Irohaは扱いやすいAPI構造や強いコンセンサスアルゴリズム、セキュリティが特徴で、国内外での社会実装が進んでいます。
特にカンボジア中央銀行のCBDC「Bakong(バコン)」の基盤技術に採用されたため、世界的に注目されました。

主要なサービスは以下の通りです。

Hyperledger Iroha

Irohaは金融・医療・行政など厳格なセキュリティが求められる領域に最適化されたブロックチェーンプラットフォームです。以下のような特徴があります。

  • 高い処理性能
  • ネットワーク負荷が高くても安定動作
  • コードの可読性が高い

なお、Soramitsuの提供サービスは、すべてHyperledgerIrohaを基盤としています。

CBDC構築

Soramitsuの最大の実績が、カンボジア中央銀行のCBDC「Bakong」です。
Bakongは、世界で最も早期に本格運用されたCBDCのひとつであり、実際に全国民規模で利用される決済インフラとして稼働しています。

ID/ポイント/決済領域向けソリューション

Soramitsuは金融以外にも、信頼性を重視するデータ管理領域を中心に実証実験を進めています。

  • 企業ポイント管理
  • 公的IDインフラ
  • 大学の証明書発行

Soramitsuは、行政・金融レベルの実績を持つ、国内でも屈指の、社会実装実績のあるブロックチェーン企業です。

Datachain株式会社

画像引用:https://www.datachain.jp/ja

Datachainは、ブロックチェーンの相互運用性(インターオペラビリティ)に特化した国内スタートアップです。

ブロックチェーンの相互運用性とは、異なるブロックチェーン同士を接続し、データのやり取りを可能にする技術を指します。

Datachainでは、複数チェーン間でデータ・資産を安全にやり取りできる仕組みを提供しており、Web3時代に不可欠なチェーンをまたいで接続が可能です。

特にCosmos(IBC)、Ethereum、HyperledgerFabricなど主要チェーンを接続する技術に強く、高い専門性を誇ります。

また、三菱UFJ銀行など大手金融機関との共同実証も進んでおり、社会実装のスピードが非常に早い企業です。

Datachainの主要サービスを紹介します。

クロスチェーンプロトコル(IBC)

Datachainでは、Cosmosが提唱するIBC(Inter-BlockchainCommunication)を応用し、異なるチェーン間の相互運用性を実現する技術を提供しています。

  • Web3サービス間の資産移動
  • 金融領域での証跡・決済のチェーン横断
  • 企業内ブロックチェーンの接続

異なるブロックチェーン間の接続を標準化・安全化し、エンタープライズ企業がマルチチェーン環境をスムーズに利用できるための土台を提供しています。

YUI/CrossFramework

Datachainの代表的な開発フレームワークで、Ethereum、Fabric、Corda、Cosmosなど複数のブロックチェーンを安全に連携させるためのツール群です。

金融機関やエンタープライズ企業が、マルチチェーン環境をスムーズに構築できる仕組みとして高く評価されています。

大手金融機関との実証実験

三菱UFJ銀行(MUFG)やSBIなど、国内大手金融プレイヤーと共同で、以下のような高度なプロジェクトを推進しています。

  • トークン化証券
  • クロスチェーン決済
  • デジタルアセットの相互運用

日本国内でチェーン間連携をここまで実践している企業は多くありません。そのため、Datachainは、Web3の基盤整備をになう企業として注目されています。

Ginco株式会社

画像引用:https://www.ginco.co.jp/

Gincoは企業向けWeb3インフラの提供に特化したスタートアップです。
ウォレットやNFT、ブロックチェーンAPI、運用管理基盤など幅広い領域をカバーしています。

国内企業のWeb3参入を支えており、金融やゲーム、行政など多数の大手企業がGincoのプロダクトを採用しています。

また、強固なセキュリティを持つエンタープライズウォレットは国内トップクラスと評価され、Web3企業や暗号資産事業者から人気です。

Gincoの主要なサービスを紹介します。

GincoEnterpriseWallet

企業・金融機関向けの高セキュリティウォレットで、以下の要件に対応しています。

  • マルチシグ
  • 権限管理
  • ログ監査
  • コンプライアンス支援

暗号資産業者だけでなく、Web3ゲームやNFTプロジェクト、行政でも採用が進み、国内ウォレット市場の準デファクトスタンダードとなりました。

NFT発行・管理プラットフォーム

Gincoは、ブランド企業・IP企業向けに、NFT発行や販売・管理を支援するプラットフォームを提供しています。
すでに数多くの大型IPとのコラボ実績があります。

Web3API/SDK

開発者が複数チェーンへ簡単に接続できるAPI/SDKを提供しており、以下の機能が実装可能です。

  • トランザクション管理
  • NFTのミント
  • ウォレット連携

GincoはWeb3を導入したい企業にとって、もっとも使いやすい「導入基盤」を提供する企業です。

bitFlyerBlockchain株式会社

画像引用:https://blockchain.bitflyer.com/

bitFlyerBlockchainは、国内最大級の暗号資産取引所bitFlyerのブロックチェーン専門子会社です。


高いセキュリティ水準と金融領域での知見を活かし、企業向けブロックチェーンプラットフォーム「miyabi」を提供しています。

miyabiは国産の独自ブロックチェーンで、高速処理や堅牢性・実用性を兼ね備え、銀行・通信企業・製造業などあらゆる産業で採用されています。

bitFlyerBlockchainの主要サービスは以下の通りです。

独自ブロックチェーン「miyabi」

miyabiは、数千件〜数万件規模の処理を高速にできる性能を持っており、改ざん耐性の高いネットワークを企業向けに提供しています。

  • 企業ポイント管理
  • 証跡管理
  • 金融取引基盤
  • IoTデータ連携

Miyabiは、データの信頼性と取引の安全性をブロックチェーン技術で担保します。

エンタープライズ向けに特化しているため、実ビジネスへの導入障壁が低いのが強みです。

NFT・Web3ソリューション

bitFlyerBlockchainは、NFT発行基盤や、企業向けトークンサービス開発支援も展開しています。

Web3時代のデジタル資産管理に必要な機能を幅広く提供しています。

ブロックチェーン開発支援・コンサルティング

bitFlyerBlockchainでは、金融取引所運営の知見をもとにして、セキュリティ設計やチェーン設計など、実装レベルでの専門支援を行っています。
「安全で実用的な国産チェーン」を提供する企業として、国内での信頼度は極めて高いでしょう。

SBIホールディングス株式会社

画像引用:https://www.sbigroup.co.jp/

SBIホールディングスは、日本の金融グループとして多岐にわたる事業を展開する企業です。

また、ブロックチェーン・デジタル資産分野でもリーダー的役割を担っています。

暗号資産取引所の運営やWeb3投資、フィンテックベンチャー支援など、デジタル金融エコシステム全体に深く関与しています。

さらに、ブロックチェーンを活用した新たな金融・資産流通モデルの創出に積極的です。たとえば、2025年8月には、ブロックチェーン・オラクル大手のChainlinkLabsと提携し、アジア金融機関向けの次世代ブロックチェーン基盤の構築を発表しました。

SBIホールディングスでは、暗号資産取引という従来部門を基盤にしながら、トークン化資産やステーブルコイン、クロスボーダー決済など、未来の金融インフラを見据えた動きが目立ちます。

SBIホールディングスの主要サービスは以下の通りです。

暗号資産取引プラットフォーム

SBIグループが展開する暗号資産交換業では、国内主要取引所の一つとしてビットコインやイーサリアムなどの主要銘柄を扱い、金融ライセンスを活かした信頼性の高い運営を行っています。

トークン化資産・ステーブルコイン・オラクルサービス

SBIホールディングスでは、Chainlinkとの提携により、以下のサービスの提供ができるようになりました。

  • ブロックチェーン上での実世界資産のトークン化
  • オンチェーン債券、ステーブルコイン準備金のオンチェーン検証

おもに金融機関向けのユースケースの拡大を狙っています。

金融機関向けブロックチェーン基盤構築

SBIホールディングスでは、グループ会社や提携先を通じて、ブロックチェーンを活用した送金・決済・資産管理基盤を国内外で構築中です。

たとえば、R3のCordaやHyperledgerベースのネットワークを用いた実証も含まれています。

なお、R3のCordaやHyperledgerベースのネットワークは、どちらも企業間の利用を目的としたパーミッション型(許可制)の分散型台帳技術(DLT)です。

日立製作所

画像引用:https://www.hitachi.com/ja-jp/

日立製作所は、日本を代表する総合電機・ITソリューション企業です。

社会インフラや製造業、通信など幅広い分野で事業を展開しています。ブロックチェーン技術についても早期から研究・開発を進め、エンタープライズユースに向けた実用サービスを提供しています。

日立は「HyperledgerFabric」などのオープンソースブロックチェーンプロジェクトにも設立当初から参加しており、信頼性の高い業務基盤構築が強みです。

また、日立は社会インフラを支える技術基盤構築のノウハウを活かし、ブロックチェーンを企業取引やサプライチェーン・行政などに適用する存在でもあります。

日立の主要サービスを紹介します。

HitachiBlockchainServiceforHyperledgerFabric

このマネージドサービスでは、HyperledgerFabricを基盤とし、ブロックチェーンネットワークの設計・構築・運用をワンストップで支援します。企業・自治体の実証実験(PoC)から本番導入に至るまでカバーしている点が特徴です。

ブロックチェーンシステム開発支援サービス

日立では、企業間取引やサプライチェーン、価値流通、証跡共有型アプリケーションなど、複数業界をまたぐ用途に向けて、テンプレートや開発環境を整備しています。

開発支援・運用支援も含めたサービスの提供も可能です。

ブロックチェーン活用支援サービス

日立は、ブロックチェーンを利用したデータ流通やトークン発行・NFT・ポイント管理など企業ユースの拡張領域にも積極的に取り組んでいます。

API型サービスとして提供している事例もあります。

たとえば、みちのく銀行では、日立の「金融API連携サービス」を導入し、自動家計簿・資産管理サービスである「マネーフォワード」とデータ連携を実現しました。

これにより、利用者は代理ログインを必要とせずに、口座残高などの情報を外部アプリで確認できるようになりました。

富士通株式会社

画像引用:https://global.fujitsu/ja-jp

富士通は、クラウド・AI・ネットワーク・セキュリティなどを包括的に手がけるICTサービスの国内有数の企業です。

ブロックチェーン分野では、HyperledgerFabricをベースにしたビジネス適用や、Web3・データ流通基盤への応用を進めています。

特に、異なるチェーンを接続する技術「ConnectionChain」なども研究・展開しており、安全なチェーン間連携やデータ流通のインフラ化に注力しています。

企業・公共機関のDXを支える中で、ブロックチェーン技術を信頼性の高い「社会インフラの一部」として考える企業です。

富士通の主要サービスを紹介します。

FujitsuBlockchainService(BaaS)

富士通のブロックチェーンサービスは、Hyperledgerを基盤とし、企業が迅速にブロックチェーンを導入できるように設計されています。特に、早い取引速度など汎用的な開発言語が使用可能です。

Web3AccelerationPlatform&ConnectionChain

富士通では、2023年に「FujitsuWeb3AccelerationPlatform」を発表しました。

複数チェーンの連携(クロスチェーン)やステーブルコイン利用を含むデータ流通基盤「Data e‑TRUST」などの提供を開始しています。

デジタルトラスト・データ流通ソリューション

ブロックチェーンとともに、デジタルアイデンティティ(DID)やトレーサビリティ、サプライチェーン管理といった分野で信頼構築を支援しています。

たとえば「ConnectionChain」による異なるチェーン間取引の証跡管理などはそのひとつです。

IBM(International Business MachinesCorporation)

画像引用:https://www.ibm.com/jp-ja

IBMは米国を拠点とする世界的IT企業です。エンタープライズ向けのブロックチェーン基盤やクラウド・AIとブロックチェーンを融合させたソリューション提供に力を入れています。

特に、企業連携・複数組織が共通のネットワークを構築する「コンソーシアム型ブロックチェーン」において、実績・技術ともに好評です。


また「IBM Blockchain Platform」は、ハイブリッドクラウド環境で稼働するよう設計されており、企業のデータレジデンシーやセキュリティ・拡張性などの要件に柔軟に対応します。

ハイブリッドクラウド環境とは、プライベートクラウドとパブリッククラウドのメリットを活かせるようにしたITインフラ環境です。

パブリッククラウドは、インターネットを経由して不特定多数のユーザーがリソースを共有します。

プライベートクラウドは、特定の組織専用の環境です。

IBMの主要サービスを紹介します。

IBMBlockchainPlatform

企業向けBaaS(BlockchainasaService)として、HyperledgerFabricベースのネットワーク構築・運用・管理を支援します。

Kubernetes・Red Hat・クラウド連携などを通じて、マルチクラウド環境でも安全な動作が可能です。

食品トレーサビリティ「IBMFoodTrust」

サプライチェーンにおける透明性・トレーサビリティを高める用途として、食品業界向けにIBM Food Trustを提供しています。

ブロックチェーン上で食品の生産から流通・消費までを追跡し、安全性・信頼性を担保しています。

金融・保険・物流向けブロックチェーンソリューション

複数の金融機関が参加可能なブロックチェーンネットワーク設計です。

保険契約の自動化や物流データの共有・改ざん防止など、幅広い業界ユースケースに対応しています。

特に、ハイブリッドクラウドにおける分散台帳ネットワーク構築支援が好評です。

ブロックチェーンの企業に関するよくある質問

最後に、ブロックチェーンの企業に関する質問をまとめます。

企業の選び方やコストなどを検討する際の参考にしてください。

Q1.ブロックチェーン企業はどの業界で活用されていますか?

金融はもちろん、物流や医療、行政、製造、エンタメ、ゲーム、サプライチェーン、証跡管理など、多くの産業で導入が進んでいます。

Q2.ブロックチェーン企業を選ぶ際のポイントは?

技術力だけでなく、実証実績やセキュリティ体制、サポート範囲、BaaSの有無、パートナー企業の実績などを確認しましょう。

Q3.大企業とスタートアップではどちらが良い?

大企業は安定性・信頼性が高く、スタートアップはWeb3特有のスピードと柔軟性が強みです。

なお、どちらが合うかは用途によって異なります。必ず複数の企業を比較検討してください。

Q4.ブロックチェーン企業の導入コストはどれくらい?

要件次第で費用は大きく変動します。

たとえば、PoCは数百万円〜、本格導入では数千〜数億円規模になるケースもあります。

なお、PoCとは、本格的な導入を判断する前に、試作やデモを通じて仮説を検証するものです。

Q5.Web3とブロックチェーン企業の違いは?

Web3は分散型インターネットという概念です。

一方、ブロックチェーン企業はその技術基盤を提供する企業です。

Web3はブロックチェーンを含むより広い領域を指します。

まとめ

2025年時点でブロックチェーン技術は、暗号資産だけでなく金融DXや物流、行政、ゲーム、医療など社会の多くの領域で活用されています。

企業も大手からスタートアップまで幅広く、提供するサービス内容もブロックチェーン基盤やウォレット、NFT、ID、トークン、BaaSなど多岐にわたります。

この記事では、ブロックチェーン企業8社の特徴を紹介しました。

用途に応じて最適な企業は異なるため、自社の課題に合ったパートナー選びが重要です。

ブロックチェーンは今後も社会インフラに組み込まれていく技術であり、企業のデジタルトランスフォーメーションを支え続けるでしょう。