金融庁が、暗号資産の無登録販売業者に対する罰則を大幅に引き上げる方針を固めた。日本経済新聞の報道によると、近く召集される特別国会に金融商品取引法などの改正案を提出し、現行の資金決済法に置かれている暗号資産関連規定を金融商品取引法へ移す構えである。無登録販売に対する刑事罰は、現行の「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」から、「10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方」へ引き上げられる見通しだ。

規制の軸足を資金決済法から金商法へ移す

今回の見直しの土台には、金融庁のワーキング・グループ報告がある。金融庁は2025年12月、暗号資産制度に関する報告書を公表しており、暗号資産を金商法の規制対象とする場合、資金決済法の規定をそのまま残すと二重規制になり、規制の複雑化や事業者負担を招くおそれがあるため、基本的に金商法のみで規制することが適当ではないかとの考えを示していた。あわせて、現状の暗号資産取引が投資目的で行われる比重の高さを踏まえ、金商法に移しても決済用途の利用が制限されるものではなく、むしろ利用者保護やエンフォースメント強化につながるとしている。

無登録業者への罰則は「株式並み」に近づく

日経報道ベースで伝えられている今回の改正ポイントは、無登録業者に対する処罰水準の大幅な引き上げである。これまで暗号資産の無登録販売は資金決済法の枠組みで処理されてきたが、金商法へ移管されれば、より重い刑事罰が適用される。対象は暗号資産の無登録販売だけでなく、無登録で店頭デリバティブ取引を勧誘する業者などにも広がる方針とされる。

証券取引等監視委の「犯則調査」対象に加える方向

取り締まり面でも、従来より踏み込んだ対応が検討されている。報道によれば、新制度では証券取引等監視委員会が暗号資産の無登録販売を犯則調査の対象に加え、刑事告発を視野に立ち入り検査や証拠物の差し押さえを実施できるようにするという。金融審議会の総会・分科会合同会合の議事録でも、暗号資産に係る不公正取引について、証券取引等監視委員会の犯則調査権限や課徴金制度を創設すべきだとする整理が確認できる。

登録業者の呼称も「暗号資産取引業者」へ変更見通し

制度変更に伴い、登録業者の法的呼称も変わる見通しである。日経報道では、現在の「暗号資産交換業者」から「暗号資産取引業者」へ変更されるとしており、金融庁の税制改正資料でもすでに「暗号資産取引業者」という表現が使われている。税制面では、改正金商法の施行を前提に、一定の暗号資産取引を申告分離課税20%へ移す方針も示されており、制度全体を“投資商品としての暗号資産”へ再整理する流れが強まっている。

背景にあるのは投機化と利用者保護の必要性

金融庁側の議論では、暗号資産が決済手段としてよりも、投資・投機対象として扱われる実態が強く意識されている。ワーキング・グループの資料でも、暗号資産を金商法で規制することにより、利用者保護のための規制やエンフォースメントを強化し、より安心して取引できる環境整備につながるとの考えが示されていた。今回の厳罰化方針は、単なる摘発強化ではなく、暗号資産市場全体を証券・デリバティブに近い監督体系へ組み替える流れの一部と見るべきだろう。

今回の動きが意味するもの

今回の見直しは、暗号資産をめぐる日本の規制が「交換業の登録管理」中心の段階から、「投資家保護と市場監視」中心の段階へ進みつつあることを示している。もっとも、現時点で確認できるのは日経報道と、すでに公表済みの金融庁報告書・関連資料までであり、実際の法案条文や施行時期は今後の正式提出後に詰まる見通しである。それでも、無登録販売への刑事罰引き上げと犯則調査の導入は、日本の暗号資産規制における大きな転換点になりそうだ。

出典

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO95048910X10C26A3MM8000