AIエージェント向け決済インフラを掲げるブロックチェーン「Tempo」がメインネットを公開した。発端はTempo公式Xの投稿で、「Tempo Mainnet is live!」として、公開RPCエンドポイント経由で誰でもTempo上に構築できるようになったと案内したものだ。あわせて同社は、Stripeと共同策定した「Machine Payments Protocol(MPP)」も発表している。

メインネット公開で何が始まるのか

Tempoは自社ブログで、同ネットワークを「インターネット規模の現実世界向け決済インフラ」と位置付けている。特徴として、即時決済、予測しやすい低コスト、高スループット、グローバル利用を挙げており、公開RPCの提供開始によって開発者はメインネット上で直接アプリケーションを構築できるようになった。

Tempoは「支払い特化型L1」を打ち出す

Tempoの公式サイトでは、同チェーンを「payments at scaleのためのpurpose-builtなLayer 1 blockchain」と説明している。さらに、ParadigmとStripeによりインキュベートされたプロジェクトであり、ステーブルコインを使った現実世界の決済に最適化しているとする。一般的な汎用チェーンや売買特化型チェーンではなく、送金、グローバルペイアウト、給与支払い、組み込み金融、マイクロトランザクション、エージェント決済といった用途を前提に設計された点を強調している。

同時発表のMPPは、AIエージェント決済の標準化を狙う

TempoとStripeが同時に打ち出したMPPは、AIエージェントやサービス同士が支払いをプログラム的に調整するためのオープン標準である。Stripeの説明では、エージェントがサービスやAPI、MCP、HTTPエンドポイントに対してリソースを要求し、支払い要求を受け取り、認可後に決済を完了する流れを共通化する。これにより、マイクロペイメントや継続課金のような機械同士の支払いを扱いやすくする狙いがある。

仕組みの中核は「一度認可して継続課金する」セッション機能

Tempoのブログでは、MPPの中核機能として「sessions」を紹介している。これは「お金版OAuth」のような仕組みで、一度上限付きで認可すれば、その範囲内で継続的に支払いを実行できるというものだ。サービス利用のたびに個別オンチェーン決済を繰り返すのではなく、複数の小口支払いを集約して精算できるため、高頻度・少額の機械決済を現実的にする設計とされる。

Stripeはすでに自社基盤への接続方法を提示

Stripeは、事業者がPaymentIntents APIを使って数行のコードでMPP経由の支払いを受け付けられると説明している。受け取り側は、ステーブルコインに加えて、カードやBNPLなどもShared Payment Tokensを通じて扱えるとしており、Stripeの既存ダッシュボードやレポート、税計算、不正対策、返金フローとも接続可能だという。人間向け決済で使ってきたStripeの基盤を、そのままAIエージェント決済にも広げる構図である。

VisaやLightsparkも拡張に参加

Tempoによれば、MPP自体はTempo上で動く一方、プロトコルそのものは特定レールに依存しない設計になっている。具体例として、Visaはカード決済対応、Stripeはカード・ウォレット・その他の決済手段対応、LightsparkはLightning Network経由のビットコイン決済対応を進めている。つまりTempoは、自前チェーンの利用を前提としながらも、機械決済の標準自体はより広い決済ネットワークへ拡張する考えだ。

想定されるユースケースは「AIが他サービスに支払う世界」

Tempoは、リサーチエージェントがデータセット利用料を支払う、開発エージェントが計算資源やテスト基盤を購入する、ワークフローエージェントが複数サービスへ段階的に支払う、といった利用例を挙げている。Stripeも、Browserbaseがエージェントにヘッドレスブラウザをセッション単位で販売し、PostalFormが物理郵便の送付を機械的に受け付け、Stripe Climateへのプログラム的な拠出も可能になったと紹介している。AIが“作業する”だけでなく、“支払う”ことまで前提にした設計が見えてきた。

パートナー陣にはOpenAIやAnthropic、Visaなどの名前も並ぶ

Tempoのブログでは、Anthropic、DoorDash、Mastercard、Nubank、OpenAI、Ramp、Revolut、Shopify、Standard Chartered、Visaなどのパートナーと連携し、こうしたユースケースをメインネットに載せていくとしている。現時点で各社がどの段階まで実装しているかは個別に開示されていないが、少なくともTempo側は、大手AI企業、金融機関、決済ネットワーク、商取引事業者を巻き込んだエコシステム形成を目指している。

今回の発表が意味するもの

今回のTempoメインネット公開は、単なる新チェーンの立ち上げというより、「AIエージェントが自律的に支払う」ためのインフラ競争が本格化していることを示す動きといえる。

Coinbaseのx402など関連規格も出てきている中で、Tempoはステーブルコイン決済に最適化したL1と、Stripe共同のオープン標準を同時に投入した。今後の焦点は、開発者がどれだけMPPを採用するか、そしてAIエージェント決済が実験段階から実運用へ進むかに移りそうだ。

出典

https://twitter.com/tempo/status/2034253704807780543