LayerZeroは、新たなブロックチェーンアーキテクチャ「Zero」を公開した。公式サイトではZeroを「The Last Blockchain」と位置付け、「分散化のビジネスモデルを大規模に成立させる最初のブロックチェーンアーキテクチャ」だと説明している。LayerZeroは、既存チェーンの延長ではなく、ブロックチェーンを第一原理から再設計した新構想として打ち出している。

Zeroが掲げるのは「無限スケール」に近い処理性能

LayerZeroによれば、Zeroはゾーンごとに最大200万TPSまで設定可能で、既存ソリューションを桁違いに上回るスループットを目指す設計になっている。また、ネットワークに対する1取引あたりのコストは「1セントの1万分の1」とし、従来のガス代中心の発想を過去のものにすると訴えている。さらに、検証に必要な計算要件を極小化し、「分散化と低コストは両立できる」と主張している。

中核概念は「複製をなくす」ことにある

Zeroの説明で最も目を引くのは、「replicationを完全に排除することで、世界経済をオンチェーンへ持ち込む」という主張である。公式サイトでは、Zeroを「世界初のヘテロジニアス・ブロックチェーン」と呼び、従来のように全ノードが同じ状態を大量複製する構造から離れることで、性能とコストの壁を突破しようとしている。これは、現在のL1やL2のスケーリング競争とは異なる方向性を前面に出したものといえる。

汎用スマートコントラクトとグローバル市場を両立させる構想

Zeroは用途面でも、単なる決済特化チェーンではない。LayerZeroは、Ethereum互換の汎用実行環境を備え、SolidityコントラクトをそのままZeroへ展開できるとしている。また、「Global Permissionless Markets」を掲げ、誰でもアクセス可能な市場インフラとして使えること、さらにステーブルコインやトークン化資産の発行・移転・受け渡しにも向くと説明している。つまり、汎用計算基盤、資本市場、決済インフラを一体で担うことを狙っている。

技術面では4つの“100倍改善”を訴求

LayerZeroはZeroの基盤技術として、ストレージ、計算、ネットワーク、ZKの4領域で「100倍級の改善」を掲げている。ストレージでは「QMDB」により、検証可能データベースの書き込み速度を100倍改善するとし、計算では「FAFO」という新しいスケジューリングアルゴリズムで最大200万TPSを実現すると説明する。ネットワーク面では「SVID」により10GB/sの転送性能を、ZK面では「Jolt Pro」によりZKVM向けで“gigahertz proving systems”を実現するとしている。

ターゲットは金融・決済・資本市場インフラ

Zeroのページには、パートナー候補・協業先としてCitadel Securities、DTCC、ICE、Google Cloudのロゴも掲載されている。現時点で各社がどこまで具体的に導入・実装しているかはこのページだけでは分からないが、LayerZeroがZeroをDeFi向け実験チェーンではなく、伝統的な市場インフラや大規模金融システムを見据えた基盤として訴求していることは明確である。

現段階では“構想提示”の色合いも強い

もっとも、今回確認できる公開情報の中心は、Zeroのコンセプト説明と技術的主張である。ホワイトペーパーや技術ポジショニングペーパーへの導線は示されているが、メインネット稼働時期、開発者向けの詳細仕様、実運用中のユースケース、第三者検証済みの性能データなどは、この紹介ページだけでは十分には分からない。そのため現時点では、「革新的な新アーキテクチャの正式発表」である一方、「実証はこれから」という段階と見るのが妥当である。

今回の発表が意味するもの

Zeroの発表は、ブロックチェーン業界の競争軸が、単なるL1・L2の処理速度比較から、アーキテクチャそのものの再設計へ移りつつあることを示している。LayerZeroは、相互運用プロトコルで築いた立場を土台に、「次の金融インフラそのもの」を狙う構えを鮮明にした。ただし、その野心が本当に現実の市場インフラへ採用されるかどうかは、今後の技術検証と実装実績に大きく左右されることになりそうだ。

出典

https://layerzero.network/zero