Chainalysisは4月8日、ステーブルコイン決済の将来性を分析したレポート予告記事を公開し、2025年の実需ベースのステーブルコイン取引量が28兆ドルに達したとした上で、2035年には自然成長だけでも719兆ドル、世代間資産移転や加盟店導入の加速を織り込めば最大1.5京ドル規模に近づく可能性があるとの試算を示した。記事は、今後公開予定のレポート「The New Rails: How Digital Assets Are Reshaping the Foundations of Finance」の先行内容として位置付けられている。

2025年の実需ベース取引量は28兆ドル

今回の分析でChainalysisが重視しているのは、単純なオンチェーン総取引量ではなく、「adjusted stablecoin volume」と呼ぶ実需寄りの指標である。これは流動性供給、ボット取引、MEV移転などのノイズを除き、支払い、送金、決済といった有機的な経済活動を抽出したものだという。Chainalysisは、この調整後取引量が2023年以降年平均133%で成長し、2025年に28兆ドルへ達したと説明している。

2035年に719兆ドル、強気シナリオでは1.5京ドル近くへ

Chainalysisは、現在の成長率が大きな追加要因なしで続いた場合でも、2035年の調整後ステーブルコイン取引量は719兆ドルに達すると予測する。その一方で、マクロ要因が重なれば予測値はさらに膨らみ、2035年には約1.5京ドルに近づく可能性があるとしている。記事では、この規模は現在の世界のクロスボーダー決済市場を上回る水準だと位置付けている。

成長要因の一つは「100兆ドル規模」の世代間資産移転

同社が最大の追い風として挙げたのが、ベビーブーマー世代からミレニアル世代、Z世代への大規模な資産移転である。Chainalysisは、2028年から2048年にかけて最大100兆ドルが若年世代へ移る可能性があるとし、この動きだけで2035年の年間ステーブルコイン取引量を508兆ドル押し上げると試算した。マーケット側の根拠としては、Merrillの分析で2048年までに約124兆ドルの資産移転が起こり、その大半が次世代へ渡るとされているほか、Geminiの2025年調査では世界全体でZ世代の51%、ミレニアル世代の48%が現在または過去に暗号資産を保有した経験がある。

加盟店導入が進めば、カード決済網との競争が本格化

もう一つの主要要因が、店舗決済への浸透である。Chainalysisは、ステーブルコイン決済が加盟店インフラの標準機能になれば、「暗号資産で払う」という行為自体が特別な選択ではなくなり、通常のカード決済と同じ感覚で使われるようになるとみている。その結果、オンチェーンのステーブルコイン取引件数は2031年から2039年の間にVisaやMastercardのオフチェーン取引件数と肩を並べる可能性があるとした。POS浸透だけでも2035年の年間取引量を232兆ドル押し上げるとの試算である。

支払い大手もすでに布石を打っている

記事では、こうした流れを裏付ける事例として、StripeによるBridge買収や、MastercardによるBVNKの買収発表が挙げられている。Stripeは2025年2月にBridge買収完了を公表し、デジタルドル基盤の拡大を進めている。Mastercardも2026年3月、ステーブルコイン基盤企業BVNKを最大18億ドルで買収すると発表した。Chainalysisは、こうした案件を通じて、ステーブルコインが周辺技術ではなく「中核的な決済インフラ」になりつつあると評価している。

銀行や既存決済網にとっては「対応するか、他社レールを使うか」の段階へ

Chainalysisは、従来の決済レールが多層の仲介、バッチ処理、数日単位の着金を前提にしているのに対し、ステーブルコインは24時間365日、数秒単位での決済完了、低コスト、プログラム可能性を持つと整理する。そのため、銀行や既存の決済事業者にとっては、規制対応を議論する段階から、実際にどう実装するかの段階へ移りつつあるというのが今回のメッセージである。もっとも、今回示された2035年の数字はChainalysisによる予測であり、前提条件次第で大きく変わり得る。現時点では、ステーブルコインが「投機の道具」から「決済インフラ候補」へ本格的に評価軸を移し始めたことが、最大のニュースといえそうだ。

出典

https://www.chainalysis.com/blog/stablecoin-utility-future-of-payments/