RWAの焦点が、暗号資産ネイティブな商品から伝統金融の中核インフラへ移りつつある。DTCCは2026年5月、DTCのトークン化サービス開発を前進させ、50社以上の金融・テクノロジー企業とデジタル資産導入に向けた取り組みを進めていると発表した。

DTCCは米国証券市場のポストトレード領域を支える巨大インフラであり、その動きは市場参加者にとって大きな意味を持つ。株式や米国債をトークン化する試みは、単なる新商品ではなく、所有権、決済、担保、流動性管理のあり方を変える可能性がある。

証券トークン化はインフラの話へ

トークン化された証券の利点としてよく挙げられるのは、決済の迅速化、担保移転の効率化、24時間に近い市場運用、バックオフィス処理の自動化だ。特に米国債のように流動性が高く、担保として使われる資産は、オンチェーン化の効果が大きいとみられている。

一方で、証券トークン化には高いハードルもある。投資家保護、法的所有権、企業行動、議決権、配当、カストディ、既存システムとの相互運用性など、実装すべき論点は多い。市場インフラを担うDTCCが関与する意味は、こうした実務課題を制度金融の文脈で解こうとしている点にある。

ウォール街のRWA競争

ウォール街では、資産運用会社、銀行、証券会社、カストディ事業者がRWA領域への関心を強めている。トークン化は、暗号資産価格の短期的な上下とは別に、金融市場の効率化というテーマで語られるようになった。

DTCCは2026年7月に限定的な本番取引を進め、10月のサービス開始を目指す計画を示している。予定通り進めば、証券トークン化は実験段階から市場インフラの一部へ近づくことになる。

暗号資産業界にとっても、この流れは重要だ。RWAが拡大すれば、ステーブルコイン、カストディ、ウォレット、コンプライアンス、オンチェーンデータ分析など周辺領域の需要も広がる。次の成長テーマは、投機的なトークン発行ではなく、既存金融資産をどうオンチェーンで扱うかに移っている。