ステーブルコインUSDCの発行元であるCircleは6月8日、ビットコインを1対1で裏付けるラップドビットコイン「cirBTC」をEthereumメインネット上で提供開始したと発表した。狙いは、保有するビットコインをEthereumのDeFi(分散型金融)で担保として活用できるようにすることにある。すでに市場を握るWrapped Bitcoin(wBTC)やCoinbaseのcbBTCに、ステーブルコイン最大手が正面から挑む構図である。

cirBTCはネイティブビットコインを規制下のカストディで裏付ける

cirBTCはEthereum上で発行されるERC-20トークンで、1トークンごとにネイティブのビットコインが1対1で裏付けられる。裏付け資産となるビットコインは、規制下にある分別管理のカストディ(保管)で保有される設計だとされる。利用者はEthereum上のスマートコントラクトを通じて、ビットコインの価値を保ったままDeFiの世界に資産を持ち込めるようになる。

裏付けはChainlinkの「Proof of Reserve」でオンチェーン検証する

cirBTCは、Chainlinkの「Proof of Reserve(準備金証明)」を採用し、裏付けとなるビットコインの保有状況をオンチェーン上でリアルタイムに検証できるようにしている。ラップドビットコインは「発行体が本当に同量のビットコインを保有しているのか」という信頼性が常に問われてきた領域であり、第三者のオラクルを介して透明性を担保する仕組みは、機関投資家の利用を意識した設計といえる。

想定ユーザーは機関投資家やマーケットメーカーである

Circleは想定する利用者層を明確に示している。機関投資家やOTC(相対取引)デスク、マーケットメーカー、レンダー(貸し手)、そしてビットコインを担保として運用するDeFiプロトコルなどだ。個人投資家よりも、まとまった規模のビットコインを保有し、それを担保や運用に回したいプレイヤーを主な対象に据えている点が特徴である。

既存のラップドBTC市場はwBTCとcbBTCが先行している

ラップドビットコインの分野は、2019年に登場したwBTCが先行してきた。wBTCは依然として最大手で、時価総額はおよそ73億ドルとされる。2024年に登場したCoinbaseのcbBTCも約54億ドルまで規模を拡大している。合成ビットコイン系トークン全体の時価総額は125億〜135億ドル程度で推移しており、これはビットコイン全体の時価総額(約1.25兆ドル)の約1%にとどまる。裏を返せば、ビットコインの巨大な価値のうちDeFiに持ち込まれているのはごく一部であり、開拓余地が大きい市場でもある。

CircleはArcを通じたマルチチェーン展開を視野に入れる

CircleはcirBTCについて、Ethereumにとどまらず、自社が手がけるArcを通じて複数チェーンへ展開していく方針を示している。将来的なArc連携によって、同じカストディと検証の基準を保ったまま、ラップドビットコインの担保を他のブロックチェーン環境にも広げる狙いだ。USDCで築いた発行・準備金管理のノウハウを、ビットコイン担保の領域にも横展開しようとしている。

今回の動きが意味するもの

cirBTCの投入は、Circleがステーブルコインの発行体という枠を超え、機関投資家向けの「オンチェーン金融インフラ」全体を取りにいこうとしている動きとして読み取れる。ビットコインは時価総額で群を抜く一方、その大半はDeFiで活用されずに眠っている。規制下のカストディとオンチェーン検証を組み合わせたcirBTCは、その眠れる担保価値をEthereum経済圏に引き込むための一手であり、wBTC・cbBTCを含めたラップドBTC市場の競争を一段と激しくする可能性が高い。

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