イーサリアム(ETH)財団の研究者であるジャスティン・ドレイク氏は24日、量子コンピュータによる暗号解読の脅威に対抗するため、新たに「ポスト量子(PQ)」専門チームを結成したと発表した。

同財団の幹部はポスト量子セキュリティを今後の「最重要の戦略課題」と宣言。2019年から進めてきた研究開発を、2026年に入り本格的なエンジニアリング段階へと移行させる。

ポスト量子(PQ)チームの結成と「リーンVM」

新たに結成されたPQチームは、トーマス・コラジャー氏が率い、世界的な暗号技術の才能が集結する。その技術的核となるのが、ポスト量子時代に向けて開発されている「リーンVM(leanVM)」だ。

リーンVMは、軽量で高性能なゼロ知識証明仮想マシン(zkVM)であり、将来的な署名集約技術の要石となる。これに関連し、アントニオ・サンソ氏が来月から隔週で「PQトランザクション」に関する開発者会議を実施。ユーザー向けのセキュリティに焦点を当て、専用のプリコンパイルやアカウント抽象化の実装を推進する。

200万ドルの報奨金とAIによる突破口

財団は、イーサリアムの暗号基盤を強化するため、総額200万ドル(約3億円)の報奨金プログラムを本格化させている。

  • ポセイドン・プライズ(100万ドル): ゼロ知識証明の中核となるハッシュ関数「ポセイドン」の強化。
  • プロキシミティ・プライズ(100万ドル): より広範な耐量子暗号研究を対象とした支援。

また、技術開発においてはAIの活用も進んでおり、先週には特殊な数学用AIを用いて、ハッシュベースのスナーク(snarks)に関する難解な補題の形式証明に成功。応用暗号学における画期的な成果を収めている。

加速する開発スケジュールと業界の動向

すでにマルチクライアント対応の量子耐性開発者用テストネットワーク(デヴネット)が稼働を開始している。「Lighthouse」や「Grandine」といったクライアントはこれを実装済みで、今後「Prysm」も続く見通しだ。

背景には、量子コンピュータの進化に対する危機感がある。Googleの量子チップ「Willow」が、スパコンで100垓年かかる計算をわずか5分で実行するなど、ハードウェアの進化は理論を追い越しつつある。ヴィタリック・ブテリン共同創設者も、2030年までに現在の暗号が解読される確率を「20%」と推定しており、対策は急務となっている。

仮想通貨業界では、米大手コインベースも量子リスク評価のための独立諮問委員会を設立。イーサリアムはこの委員会にも代表を送り込み、業界全体で「価値のインターネット」としての信頼を維持するための強固な守りを固めている。

出典

https://twitter.com/drakefjustin/status/2014791629408784816