今回は、手持ちの資金以上の利回りを叩き出すDeFi(分散型金融)特有の錬金術、「レバレッジ(ループ)運用」について解説します。

これは「預ける」と「借りる」をぐるぐると繰り返すことで資金効率を極限まで高める手法ですが、同時に破産(清算)のリスクも跳ね上がる両刃の剣です。上級者がどのようにして年利数十パーセントという数字を叩き出しているのか、その裏側を客観的に紐解いていきましょう。

レバレッジ(ループ)運用の仕組み

ループ運用、またはフォールディング(折りたたみ)と呼ばれるこの手法の仕組みは、言葉にすると非常にシンプルです。

  • 手持ちの資産をプラットフォーム(Aaveなど)に預ける(担保にする)。
  • その担保をもとに、別の資産(または同じ資産)を借りる。
  • 借りた資産を、再びプラットフォームに預ける(担保がさらに増える)。
  • 増えた担保をもとに、さらに借りる。
  • これを限界まで繰り返す。

例えば、100万円分の資産しか持っていなくても、このループを繰り返すことで、計算上は200万円、300万円分の資産を「預けている」状態を作り出すことができます。

預けている金額が大きくなればなるほど、受け取れる「預入利息」も大きくなる。これがレバレッジ運用の基本原理です。

ステップアクション手元にある資産(預入額)抱えている借金(借入額)
初期状態100万円を預ける100万円0円
1回目のループ70万円分借りて、再度預ける170万円70万円
2回目のループさらに49万円分借りて預ける219万円119万円
3回目のループさらに34万円分借りて預ける253万円153万円
結果元手の約2.5倍の資産で利息計算される元手以上の借金リスクを負う

どのような時にループ運用をするのか?

わざわざ借金の金利を払ってまでループを行うのには、主に2つの理由(インセンティブ)があります。

1. 預入金利 > 借入金利 の状態(金利差益)

通常、借りる時の金利のほうが高いですが、DeFiの世界では特定のプロトコルが「自社のトークンをボーナスとして配布する(流動性マイニング)」キャンペーンを行うことがあります。

このボーナスを加味すると、「預けてもらえる利息+ボーナス」が「借りるために払う金利」を上回るというバグのような状態(プラス利回り)が発生することがあります。この時、ループを回せば回すほど利益が雪だるま式に増えていきます。

2. 同種資産でのレバレッジ(stETHとETHなど)

「Lido」などで手に入る、持っているだけで利息が増える「stETH(ステーキングイーサ)」を担保に「ETH」を借り、そのETHでさらにstETHを買って預ける、という手法です。

stETHとETHはほぼ同じ価格で連動するため、価格変動による清算リスクを極限まで抑えながら、stETHのステーキング利回りだけをレバレッジをかけて増幅させることができます。これが現在DeFiで最もポピュラーなループ運用です。

絶対に知っておくべき「強烈なリスク」

ループ運用は魔法ではありません。リターンを倍増させるということは、リスクも倍増させているということです。以下のリスクを完全に理解し、自己責任で管理できる人以外は絶対に手を出してはいけません。

1. 借入金利の高騰(逆ざやリスク)

DeFiの金利は需給によって秒単位で変動します。(※将来の利回りを正確に予測することは不可能である点に留意してください)。

最初はプラスの利回りであっても、市場環境が変わり「借入金利」が急騰した場合、払う金利がもらう利息を上回る「逆ざや(赤字)」に転落します。ループしていると、この赤字もレバレッジがかかって猛烈な勢いで資産を食いつぶします。

2. デペグによる「連鎖清算」の恐怖

担保にした資産と、借りた資産の価格バランスが崩れた時が最も危険です。

例えば、先ほどの「stETHとETH」のループにおいて、何らかの理由でstETHの価格がETHに対して下落(デペグ)したとします。担保の価値が下がるため、Health Factor(健全性係数)が急激に悪化し、清算ラインに到達します。

ループ運用では限界まで借入を行っていることが多いため、一度清算が始まると「担保が没収される → さらに担保比率が悪化する → さらに没収される」という清算のデススパイラルに陥り、元本が文字通り「ゼロ」になることがあります。

3. コントラクトリスクとガス代負け

プログラム(スマートコントラクト)のバグを突かれるハッキングリスクは、利用するプラットフォームが増えるほど高まります。また、何度も「預ける」「借りる」を繰り返すため、イーサリアムメインネットなどではネットワーク手数料(ガス代)だけで数千円〜数万円が飛び、結果的に手数料負けすることもあります。

まとめ:初心者は「仕組みを知るだけ」に留めよう

レバレッジ(ループ)運用は、資金効率を劇的に高めることができるDeFiならではの強力なツールです。Instadappなどのように、この複雑なループ操作をワンクリックで自動化してくれる便利なサービスも誕生しています。

しかし、相場急変時に対応できるだけの十分な追加資金(証拠金)と、24時間金利やHealth Factorを監視できるリテラシーがない限り、安易に手を出すべきではありません。

まずは「DeFiにはこのような高度な資金運用をしている人たちがいるから、高い利回りが生まれているんだな」という市場の構造を理解するための知識として、頭の片隅に入れておくことを強くおすすめします。