NVIDIAが今後5年間で260億ドルを投じ、オープンウェイトAIモデルの開発を本格化させる方針であることが明らかになった。発端はWIREDの報道で、同社の財務資料や幹部インタビューをもとに、NVIDIAが半導体メーカーの立場を超え、AIモデルそのものを主導する存在へと軸足を移しつつあると伝えている。

投資の狙いは「チップを売る会社」からの拡張である

今回の260億ドル投資は、単に研究費を積み増す話ではない。WIREDによれば、NVIDIAはオープンウェイトモデルを通じて、自社GPUやAI基盤との親和性を高め、スタートアップや研究者に広く使われるエコシステムを築く狙いを持つ。モデルの重みを公開することで、企業や開発者は独自の調整や再利用を進めやすくなり、その結果としてNVIDIA製インフラの採用拡大にもつながる構図である。

すでにNVIDIAはオープンモデル群を拡充している

NVIDIAは2025年後半から2026年にかけて、Nemotron、Cosmos、Isaac GR00T、Claraといったオープンモデル群を強化している。公式ブログによれば、これらは言語、ロボティクス、バイオ、フィジカルAIといった分野を対象としており、Hugging Face上でも650以上のオープンモデルと250以上のオープンデータセットを展開している。さらに2026年1月には、Nemotronの音声、RAG、安全性関連モデルや、大規模な学習データ群も公開した。

Nemotron 3 Superが今回の流れを象徴している

今回の投資方針を象徴する存在が、NVIDIAの新しいオープンウェイトモデル「Nemotron 3 Super」である。WIREDはこれを同社で最も強力なモデルと位置付けており、NVIDIAの技術レポートでも、Nemotron 3 SuperはハイブリッドMamba-AttentionとMixture-of-Expertsを組み合わせた、1200億総パラメータ級のモデルとして紹介されている。これは、NVIDIAが単に他社モデルの実行基盤を提供するだけでなく、自ら最先端モデルの供給側に立とうとしていることを示す。

背景には中国勢を含むオープンモデル競争の激化がある

WIREDは、NVIDIAの動きを、中国のDeepSeekやアリババなどが主導するオープンモデル競争への対抗軸としても位置付けている。閉じた商用モデルだけでなく、重みを広く公開するモデル群が存在感を増す中、米国側でも「高性能なオープンモデルを誰が供給するのか」が競争力の焦点になっている。NVIDIAはその文脈で、GPU供給者にとどまらず、西側のオープンAI基盤を支える中心企業になろうとしているとみられる。

NVIDIAの戦略はもともと「フルスタック志向」である

NVIDIAの最新年次報告書でも、同社は自らの戦略を「ハードウェア、システム、ソフトウェア、アルゴリズム、ライブラリ、AIモデル、学習データセット、サービスを統合するプラットフォーム戦略」と説明している。さらに、過去5年間でAI向けのフルソフトウェアスタックを構築してきたとし、最近ではNemotronやCosmosといったオープンAIモデルのリリース頻度を加速していると記載している。今回の260億ドル方針は、この延長線上にある動きとみるべきである。

研究開発費の拡大そのものも加速している

NVIDIAの年次報告書によれば、同社は創業以来の研究開発投資累計が767億ドル超に達している。加えて、2026年度の研究開発費増加要因として、人員拡大に伴う報酬増だけでなく、計算資源やインフラ費用の79%増を挙げている。AIモデル開発が、もはやソフトウェア企業だけの競争ではなく、莫大な計算資源を持つプラットフォーム企業の競争になっていることがうかがえる。

今回の投資が示すもの

今回の260億ドル投資計画は、NVIDIAが「AIブームで最も儲かる半導体企業」という立場から、AIモデルそのものの競争にも正面から踏み込む意思を示したものといえる。オープンウェイト戦略を強めれば、開発者の支持を広げつつ、自社GPUやクラウド基盤への需要も押し上げやすい。生成AIの競争軸が、モデル、データ、推論基盤、開発者エコシステムを一体で握る方向へ進む中、NVIDIAはその中心を狙う構えをさらに鮮明にした。

参考

https://wired.jp/article/nvidia-investing-26-billion-open-source-models