PayPalは3月17日、米ドル連動ステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を、PayPalアカウント上で世界70市場のユーザーに提供すると発表した。今回の拡大により、対応地域の利用者はPYUSDの購入、保有、送受信が可能になり、PayPalは越境送金の高速化と低コスト化を狙う。

70市場でPayPalアカウントから直接利用可能に

公式発表によると、今回の展開でPYUSDはアジア太平洋、欧州、中南米、北米の複数地域に拡大される。発表文では、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、フェロー諸島、グリーンランド、グアテマラ、ホンジュラス、パナマ、ペルー、シンガポール、英国、米国などが例示されており、残る対象市場にも今後数週間で順次提供するとしている。

個人は売買・保有・送受信、対象者は報酬受け取りにも対応

PayPalは、新たに対応した市場のユーザーについて、PayPalアカウントからPYUSDを直接購入・保有し、送受信できるようになると説明している。加えて、対象条件を満たすユーザーはPYUSD残高に対するリワードを受け取れるほか、PayPal内の友人・家族への送金や、外部のデジタルウォレットへの即時送金にも対応する。出金時には、PYUSDを現地通貨へ換えて日常利用に充てられるとしている。なお、シンガポールでは事業者アカウントのみ利用可能で、シンガポールの一般消費者向け提供は行わない。また、リワードは英国とシンガポールのユーザーには提供されない。

事業者向けには資金化の早さを訴求

PayPalは、PYUSDを受け取る事業者側の利点として、売上代金を数日から数週間ではなく「数分」で使えるようになる点を挙げている。これにより、流動性の改善、運転資金管理の効率化、越境取引対応の強化につながると説明している。今回の発表は、個人向けの送金手段としてだけでなく、事業者向けの決済・資金繰り改善策としてもPYUSDを位置付ける内容になっている。

PayPalは「グローバル商取引の基盤」としての役割を強調

PayPalのCrypto部門シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるMay Zabaneh氏は、現在の越境決済は「手数料が高く、時間もかかり、別時代に設計された決済タイムラインに依存している」とし、PYUSDの70市場展開によって、より速い資金アクセスと低コストな国際送金を実現したい考えを示した。PayPalは、グローバルコマースがよりデジタル化する中で、ステーブルコインが包括的で高速、低コストな商取引基盤になり得ると訴えている。

2023年の米国開始から「流動性・実用性・普及」を拡大

PayPalは、PYUSDを2023年に米国で開始して以降、今回の70市場拡大を「流動性」「実用性」「普及」の強化に向けた重要な一歩と位置付けている。発表では、より多くの場所でPayPal経由のPYUSDを使えるようにすることで、個人の国際送金コストを下げるだけでなく、企業の資金決済を早め、外国送金手数料の削減にもつなげたいとしている。

PYUSDはPaxos発行、準備資産は米ドル預金や米国債で裏付け

PayPalは、PYUSDが米国で連邦規制を受けるステーブルコインであり、Paxos Trust Companyが発行していると説明している。準備資産は米ドル預金、米国債、類似の現金同等物で全額裏付けられており、PayPalおよびVenmo上では1PYUSD=1ドルで売買可能としている。PayPal自体も、ニューヨーク州金融サービス局のライセンスの下で仮想通貨関連事業を行っている。

今回の拡大が意味するもの

今回の発表は、PayPalがPYUSDを単なる暗号資産機能ではなく、既存の決済ネットワークを補完する国際送金・商取引インフラとして押し出していることを示している。もっとも、実際の利用体験は各国の規制やPayPalの提供形態によって異なると明記されており、機能は市場ごとに一律ではない。とはいえ、70市場という広い展開は、ステーブルコインを一般ユーザーと事業者の決済導線に本格的に組み込もうとするPayPalの意思を強く印象づける動きである。

出典

https://newsroom.paypal-corp.com/2026-03-17-PAYPAL-BRINGS-PAYPAL-USD-TO-USERS-ACROSS-70-MARKETS